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横浜簡易裁判所 昭和56年(ろ)79号 判決 1982年2月02日

主文

被告人を罰金一〇〇、〇〇〇円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となる事実)

被告人は、昭和五五年七月二五日午後七時ころ、東京都渋谷区代々木二丁目二〇番二号美和プラザ新宿四〇五号下光家庭共同法律事務所において、弁護士下光軍二に対し、面談を求めたところ、同人からこれを拒否されたのに憤慨し、同人が所持していた訟廷日誌及び訴訟記録等在中の鞄一個を奪い取り、これを同年九月二八日まで横浜市中区富士見町三番地の五富士見町共同住宅四〇一号の自宅に隠匿し、よつて、同人の弁護士活動を困難ならしめ、もつて、威力を用いて同人の業務を妨害したものである。

(証拠の標目)(省略)

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、本件は被告人の精神障害によつてもたらされた犯罪であり、責任能力を欠くものであるから、無罪であると主張している。しかしながら、本件に現われた全証拠を検討すると、被告人の性向や行動にやや偏向がみられ、精神病質者的傾向が窺われないではないが、その生立や経歴に格別変つた点もなく、殊に、本件が敢行された前後の事情を観ても、精神障害を疑わせる事情は見当らない。よつて、被告人の精神障害を理由とする無罪の主張は採用することはできない。

(法令の適用)

法律に照らすと、被告人の判示所為は、刑法第二三四条、罰金等臨時措置法第三条一項一号に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、その所定罰金刑の範囲内で被告人を罰金一〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、刑法第一八条を適用して、金二〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

よつて、主文のとおり判決する。

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